三大噺　お題：ＧＷ／あさ／にぎり
作：こうけい


東山、南田、西川、北野の男性４人は、グループ旅行に出かけた。
「せっかくの＜ＧＷ＞旅行だってのに、女がいないのはつまらないな」
「しかたないさ。こういう宿だからな」
“男性グループ客に限り、当たりが出たらもう一泊サービス！”
南田の取り出したチラシには、そう書かれていた。
「一泊料金で、うまくいけばもう一泊できるんだぞ」
「よくやったぞ南田。そりゃおもしろい宿だ」

４人は旅館での一夜を楽しく過ごし、翌＜朝＞、食堂で朝食を食べる。
すると、彼らは体調に異変を覚えた。
体が熱くなり、胸が激しく疼き出す。間もなく、全身と服装が激しく変貌をとげていく。
気がつくと、４人は着物姿の女性になっていた。この旅館の従業員の服装だ。
そして横を見ると、配膳係の女性たちが男性に変身しているではないか！
「ど、どうなってるんだ…！？」

「おめでとうございます！大当たりです」
支配人が言う。
「あなたがたには、女性従業員として本旅館で一晩働いていただきます。
明日の朝には、もとの男性にお戻りいただいて、帰宅していただくことになります」
「そういうことか、一泊サービスの正体は」
「あの配膳係たちはもとの姿に戻ったってわけだな」
「でも、それってただ働きじゃないのか？なにが一泊サービスだ？」
西川が疑問を呈する。
「いいじゃないか。女になれたんだぞ、俺達。ううん、わたしたちね。ムフフフ」
北野はもうすっかり女性気分になっていた。

出発客の見送り、客室の清掃、到着客の案内、夕食の配膳、客室の布団敷き、宴会の進行役…。
初めての旅館の仕事はハードだったが、不思議なことに４人とも熟練の従業員のように体が動いた。
そして深夜。従業員室での休憩時間は、お互いの体をいじり合うムフフ大会となった。
「これで一泊サービスって、やっぱりすごく得じゃないか。当選バンザイ！」
４人は歓喜に浸りながら、眠りにつくのだった。

翌朝、４人は配膳を行なう。
男性客の何人かが変身していくと同時に、彼らはもとの男性に戻っていく…はずだが、東山だけがもとに戻らなかった。
「支配人、どうして俺だけ？」
「実は、昨晩現れた当旅館のオーナーが、お仕事中の東山様をお気に召されたのです。
東山様には、末長く当旅館で働いていただきたいと存じます」

出発の準備を済ませた南田たち３人。東山は、玄関で見送る立場だ。
「それじゃあな、東山。達者で働けよ」
「うらやましいぜ。これからは毎晩ムフフじゃないか」
「今度は夏休みにでも来るからな。そのときはまた俺達も変身してやるから、心配するなって」
（勝手なことを言いやがって！男に戻れるとわかってたからこそムフフだったんだぞ！）
東山は怒鳴ろうとしたが、口は勝手に動き、体はひとりでにお辞儀をしてしまう。
「…ありがとうございます。お気をつけてお帰りくださいませ。またのお越しを心より楽しみにしております」
（どうして南田たちなんか＜に、義理＞立てた口調で話さないといけないんだ！）
そう、心の中でぼやく東山だった。

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