とあるＣＭ１０〜紅茶
作：こうけい


沈んだ顔のサラリーマンたちが乗る通勤電車。
車窓にはいつもの灰色の街並みが広がる。

ひとりの男が、ペットボトルの紅茶を飲む。
すると不意に周囲が明るくなっていった！

「飲むな！！」
同乗していた人から、悲鳴があがった。
「わっ、わっっ！？助けて！！」
「ワオオーーッ！！！」
見ると、みな一様に体が変化しているではないか！
むくむくと音をたてながら、グラマラスな女性に姿を変えていったのだ！
「アウォオオオオーーー！」
「※★☆○×☆☆※！！！」
彼らはパニック状態で、紅茶を飲んだ男に押し寄せてきた。
もはや日本語にならない奇声をあげながら。

明るくなった車窓には、見慣れぬ塔やドームや城壁が…。
「どうなってるんだ？車掌さん！？」
紅茶を飲んだ男は大声をあげる。

ところが、かけつけた車掌も動転していた。
制服が、明るい色の女性用スーツに変わっていったからだ。
「リモーネ、エポーノ！？★☆※※？！？！」
甲高い女声でわめく車掌。
この鉄道会社に女性の車掌はいないはずなのに。

イタリア女性だらけの車内は大混乱。そして外の景色もイタリアだ。

ただひとりの日本人になった男は、ペットボトルを持ちながらニヤリと笑う。
「イタリアンレモンが、性別を変えちゃった」


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