華代ちゃんシリーズ「プラグ」
作：こうけい
（原案者・真城 悠）
＊「華代ちゃん」シリーズの詳細についてはhttp://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html
を参照して下さい。
「困るじゃないか。このケーブルじゃつながらないぞ」
「すみません、本当にすみませんでした」
とあるオフィスで、若い男性社員が男性係長に怒鳴られていた。
係長の手には、パソコン用の接続ケーブルが１本。この若い社員が買ってきたものらしい。
「君がプラグの確認を怠ったのが原因だぞ。どうしてくれるんだ？」
「店に戻って取り替えてもらいます」
「当然だ。時間がかかるが仕方がない、そうしてくれたまえ」
「お客様、お悩みがおありですね。私が解決いたしましょう」
唐突に、小柄な女性がふたりに割り込んできた。
「…君はだれだね？見かけない顔だが」
「最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に、私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい」
「たまたまってねえ、ここは他人の会社なんだけど」
女性の演説に陰口をたたく新入社員。
「あっ、申し遅れました。私はこういう者です」
そう言いながら、女性はふたりに名刺を差し出した。
「…『ココロとカラダの悩み、お受けいたします セールスレディ 真城 華代』ですか」
「はい、私にできる範囲で、あなた方のお悩みを霧散させてごらんに入れましょう」
「すみませんけど、セールスはお断りしているんですが」
係長は渋い顔をしながら出口を指差す。
「そこをなんとか、ぜひお試しいただきませんか？お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます」
「ふむ、無料か…」
タダと言われて、係長は腕を組んだ。ケーブルの返品がきかずに買い直しになることを考えれば、このセールスレディに頼んだほうが安い。
「係長、私からも彼女に依頼してほしいです」
お遣いに行かされずに済むと、新入社員も乗り気になった。
「よしわかった。真城さんとやら、お願いしよう」
「ご依頼、承りました。プラグを直せばよろしいのですね」
「ああ」
すると、係長の手にあったケーブルのプラグが変化を始めた。
プラグの黒い底面がみるみる盛り上がり、突き出ていた２５本のピンを隠してしまう。
真っ平らになったプラグは心持ち小さくなり、
今までピンが立っていたところには２５個の細かい穴が空いていった。
それと同時に、プラグを持っていた係長の手の指も、小さく丸みを帯びていく。
指の爪はアーチを描くように伸びて、真紅のマニキュアが光っていた。
そして、プラグを確認しようとした新入社員の手の指までも、ほっそりと変形して…。
思いもかけない姿になった係長と新入社員は、互いに顔を見合わせる。
「なんで、私たちまでオスからメスに…？」
甲高くなった声で、そうつぶやくのだった。
今回の依頼はストレートでしたね。オスをメスに変える、それだけですから楽でした。
依頼人さんたちも、きっと大満足していることでしょうね。
さて、何か困ったことがありましたら何なりとお申しつけ下さい。今度はあなたの街にお邪魔するかもしれません。
それではまた。
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