女珀館の若女将シリーズ
白王妃荘若女将奮戦記〜「国税局の巻」
作：よしおか
（20020503投稿、20020511発表）

ようこそ、おいでいただきました。わたくし、当旅館・白王妃荘若女将のこうけいです。
わたくし、女将になり立てで、大女将や、板さんや、仲居さん、その他の従業員たちにも迷惑をかけながらも、いろいろと教わりながらも切り盛りいたしております。まだまだ未熟者ですので、いろいろ失敗などございますがよろしくお願いいたします。

さて、今宵の当旅館のお客様は・・・

男　　「国税局のほうから参りました。」
わたし「はい、わたくしが、当『白王妃荘』の若女将のこうけいです。」
男　　「本日は、こちらに申告漏れの疑いがありますので、その調査にお伺いしました。」
わたし「申告漏れですか。毎年、申告は会計の先生と、漏れがないようにいたしておりますが・・・」
男　　「こちらでは、ＴＳがおこってますね。」
わたし「はい、それが、当旅館の売りのひとつですから。」
男　　「やはり、それで、ＴＳの申告は？」
わたし「は？ＴＳの申告とは？」
男　　「困りますね。ＴＳが起こった度に保険所のほうに申告していただかないと、ＴＳ法の適用が受けられなくなり、ＴＳした人たちも困りますし、ＴＳ税の通知も出来ずに、知らないうちに申告漏れになりますよ。」
わたし「ＴＳ税ですか？」
男　　「そうです。ＴＳされた方々のフォローのために必要な処置をするために必要な税で、戸籍の変更やその他の公文書の性別変更に必要な処理にかかる経費をまかなっているのです。」
わたし「そうなんですか。それは知りませんでした。でも、そうなると追徴課税ということになるのでしょうか。」
男　　「今回は、故意ではなくて、ご存じなかったようなので、単なる申告書類の不備と言うことで、所定の税額だけ頂くことにしておきます。その金額ですが・・・・」
わたし「はい、しばらく、お待ちください。」
そこに純白の着物を着て、手には白い羽をあしらった扇を持った大女将が現れた。
大女将「若女将。ちょっと待ちなさい。あなた、どちらからいらっしゃいました？」
男　　「はい、国税局のほうから・・・」
大女将「国税局のほうから・・・長官は、お元気ですか。当旅館のご贔屓様なもので・・・」
男　　「はい、元気にしております。」
大女将「そうですか。それはよろしゅうございました。若女将。仲居の手が足りませんでしたね。」
わたし「は、はい。でも、それが何か？」
大女将「今見つかりましたよ。ほれ。」
大女将が、そういうと、国税局から来た男の身体に変化が起こった。きれいに整えてあった髪の毛が伸び、顔も身体もこころなしか縮みだし、着ていたスーツがダブつき出した。そして、胸やお尻の辺りが、ぴちぴちに成り出した。
男　　「な、なんだ。（胸をさわって）ななんだこりゃ。ま、まさか。な、な、ない〜〜〜〜。」
大女将「若女将。仲居の着物を準備して、仲居頭にこの新人を紹介してね。根性曲がっているようだから、びしびししごくように言ってくださいね。」
わたし「あ、あの〜税務署の役人をこんなにしてもいいのですか。」
大女将「なに言ってるのよ。だれも、役人だとは言ってないわよ。」
わたし「だって、国税局のほうから来たと・・・」
大女将「国税局のほうからでしょう。国税局から来たとは言ってないわ。それに、国税局には、長官はいないわ。いるなら局長よ。それに、来るなら税務署よ。国税局が直接は来ないわ。と言うことで、こいつは偽者よ。さ、わたくしは、奥にいますので、後はよろしくね。お〜ほほほほほ。」
大女将は、扇を広げて、口を隠し、声高に笑った。わたくしは、女になって戸惑っている国税局のほうから来た元・男を、仲居頭のところに連れて行こうとした時、奥に引っ込みかけていた大女将が振りかえって、わたしに言った。
大女将「言い忘れたけど、若女将。その子の今月のお給金から二万円引いてくださいね。
わたし「なぜですか？」
大女将「それはもちろんＴＳ税です。納税は国民の義務ですからね。」
そう言い残すと、大女将は、高笑いを残して去っていった。ふうっ。


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