女珀館の若女将シリーズ
「大当たりの巻」
作：こうけい
（書き下ろし）

男のふたり連れが、それぞれ○ッテ○ーモンドチョコレートを買った。
男Ａ「このチョコレート、図書券が入っていたら大当たりだってな」
男Ｂ「おう、箱にも書いてあるしな。振ってみてわかるか？」
ふたりは自分のチョコレートの箱を振ってみるが、どちらもかさかさという音に変わりはない。
男Ａ「うーん、おまえの箱のほうがちょっとばかりかさかさが大きいような。図書券入ってるんじゃないのか？」
男Ｂ「取り替えるのは嫌だぞ」
そう言いながら、男Ｂは自分の箱を開けてみる。しかし、中身はチョコレートとクッション紙だけ。図書券なんて入ってない。
男Ｂ「ほらな、世の中そんなもんだろう。
それより、おまえの箱こそ、図書券が入ってる分だけ箱の隙間が小さくて、音も小さいに違いない。開けてみろ！」
男Ａ「わかったよ、ほら！」
男Ａが箱を開くと、さっきはなかった一枚の紙が入っていた。
男Ａ・Ｂ「なんだこれ？」
紙は、どう見ても図書券ではなかった。
そのかわり、「観光旅館女珀館　採用通知書」と印刷されていた。
男Ａ「おんな・しろ・おう・やかた？」
男Ｂ「旅館の採用通知？はははは、なにかのいたずらか？」

そこへ、和服を着けた２名の女性（？）が唐突に現れる。
わたし「おめでとうございます、大当たりですわ」
男Ａ「あ、あんたらはだれだい？」
わたし「はじめまして。観光旅館“にょはくかん”の若女将、こうけいと申します」
マサヨ「あたしはぁ、仲居のマサヨと申しますぅ」
男Ｂ「じゃあ、この通知書とやらは、あんたのところのものかい？」
わたし「ええ。このチョコのＣＭ、うちで撮影したのですわよ」
マサヨ「そして、出演したのがあたしです」
わたし「そういう縁で、メーカーとタイアップして、仲居の採用通知書を封入させていただいたのです」
マサヨ「図書券よりずっと数が少ないですからぁ、貴重ですよ」
わたし「さあさあ、採用通知をお受けになられるのは、おふたりさんのどちらですか？」
通知書を手に持っていたのは、男Ｂのほうだった。
男Ｂ「お、俺なのか？」
わたし「あなたはこれから女性となられまして、仲居として当旅館で働いていただきます」
男Ｂ「へ？女になるって！？そんなの嫌だよ！
そうだ！このチョコ、おまえが買ったものだったよな！」
男Ｂは通知書を男Ａに渡す。
男Ａ「そんな、俺だって女なんて嫌だ！返すよ」
ふたりは通知書を互いに押し付けあうばかり。

わたし「仲たがいはよくありませんわね。
そうですわね、ただいま○ッテ○ーモンドチョコレートは超増量キャンペーン中ですから、
通知書のほうも増量いたしましょう。
まだまだうちは仲居不足なのですから」
男Ａ・Ｂ「へっ！？」
確かに、パッケージには「超増量　１３０ｇ」とあるけれど…。

とたんに、通知書が２枚に分裂して、ふたりの男の手にわたった。
わたし「さあ、おふたりとも女珀館へいらっしゃい！」
いつの間にか、周囲は自然に囲まれた温泉旅館街に。
男Ａ「あれっ…お、おまえの恰好！？」
男Ｂ「おまえだって……」
ふたりの男は、揃いの着物に前掛けを下げ、丸髷を結った仲居姿になっていた。
恐る恐る、着物の合わせ目から自分の腰を探ってみる。
男Ａ・Ｂ「もしかして、まさか………ないーーーーっ！！！」
ふたりは、甲高い女声で同時に叫んだ。
マサヨ「おふたりとも、むちっとうるわしいぃ、後味すっきりな女性の肉体ですわよぉ」
わたし「…さすがマサヨさん、ＣＭどおりですわね」

元・男Ａ「俺たち、どうなっちゃうんだ？」
元・男Ｂ「女のまま、旅館で接客業かよ！？」
わたし「左様でございますわ。もう男言葉を使っちゃいけませんことよ」
マサヨ「はじめての後輩たち、たるんでないでとっとと入りなさい！」
元・男Ａ・Ｂ「とほほほ…、こんなキャンペーンって、あり…かしら！？」
わたし「キャンペーンなんて、そんなものですのよ」

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、菓子などとは一切関係ありません。

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