女珀館の若女将シリーズ
「ＭＴＦ社員の巻」
作：こうけい
（20020618発表）

社員旅行の団体が女珀館の門をくぐる。
わたし「○○社御一行様、ようこそおいでいただきました」
幹事の男「おう、若女将。今晩はお世話になるよ」
わたし「御用がありましたら、なんなりとお申し付けくださいませ」
そのとき、一行からひとりの男性社員が前に進み出てきた。
社員Ａ「あ、あの…あたしを女性部屋に…」
彼の声はやや高めだった。
わたし「はい？」
幹事の男「あっ、黙れこいつ！お前は男だろ、男部屋に泊まるんだ！
若女将、驚かせてすまない。さあ行くぞ！」
わたし「あっ……」
こうけいが驚く間もなく、問題の社員Ａは幹事たちに連れられていってしまった。

大女将「こうけいさんは、今のお客様のこと、どう思われます？」
わたし「男の恰好はしてるけど、なんだか女のかたのように見えましたわ」
大女将「そうでしょうそうでしょう。なにか訳ありに思えますわね。後でお話を聞いてみましょう」

社員Ａ「…気づいていただけましたか。さすが、噂に聞く女珀館ですね。
実はあたし、元は男として働いていたんですけど、念願かなって去年ＴＳしたんです。今は心も体も女です」
わたし「それはおめでとうございますわ」
大女将「確かに女性ですわね。ひと目でわかりましたわよ」
社員Ａ「なのに、会社はあたしを男としか扱ってくれません。
女性の服装で出社することも、女性トイレを使うことも、女性更衣室を使うことも認めてもらえませんでした。
今日だって男部屋だしお風呂も男風呂に入れっていうし、こんな社員旅行行きたくなかったのに業務命令だっていうし…」
社員Ａはレースのハンカチで涙をぬぐった。
わたし「なんとかしてあげたいですわね」
大女将「でも…うちは今、仲居の欠員はありませんのよ」
わたし「でしたら…こういたしましょうか？板さんを呼びましょう」

男性社員Ｂ「こうなっちゃったからには、僕たちも女性扱いしてくれよ」
女性社員Ｃ「いきなりＴＳしたっていわれても…」
女性社員Ｄ「そうよ。あの人だって男なんだから虫がよすぎるわ」
幹事「幹事命令だ。私を女風呂に入れろ」
女性社員Ｅ「無茶言わないで、スケベ！」
夕食を食べたとたんに、男性社員全員が女性化したのだが…。
わたし「うーん、失敗したかしら？」
大女将「元からの女性社員の反発が強まるだけでしたわね」
社員Ａ「そうなんですよ。あたしが女性扱いされないのはこのせいでもあるんですから」
大女将「時が熟すまで待ったほうがいいかもしれませんわね」
わたし「大女将、こうしたらいかがでしょう？」
こうけいの左手には、子供用の浴衣が握られていた。

わたし「ほら、社員Ａさん、これっ！」
こうけいの投げた子供用浴衣が、社員Ａの体にひっかかる。
社員Ａ「わ、はわわっ！あわああああ〜〜っ！」
浴衣に合わせて社員Ａの体が縮んでいき、子供になってしまった。
社員Ａ「お……おとこのこに…」
わたし「これで女性部屋も女性浴場もＯＫですわよ。ねえ、女性社員さん？」
女性社員Ｃ「え、ええ」
大女将「こうけいさん、どうして彼女を男の子に？」
わたし「社員Ａさん、いい子になさってれば、将来きっとまた女性になれますわよ。
あなたが大きくなる頃には、きっとＴＳが祝福されるようになってると思いますわ」
社員Ａ「は、はい…。ありがとうございます。ＴＳへの夢は忘れません」

幹事「あの〜、私たちはどうなったんでしょう？」
女性社員Ｄ「自分で考えれば？」
わたし「うふふふ、ＴＳ女性社員として、悩みをしっかり味わってほしいですわ」


またまた時事ネタになっちゃいました。
でも、この話は実在の会社とは無関係ですよ。

（感想用掲示板はこちら）
（解説はこちら）
戻る