女珀館の若女将シリーズ
１００００ＨＩＴ特別編「ＫＥＢＯさんご招待の巻」
作：こうけい
（20020613発表）

みなさま、こんにちは。「観光旅館　女珀館」若女将のこうけいでございます。
今回は、１００００ＨＩＴ記念といたしまして、ＫＥＢＯ様を当旅館にご招待いたしました。
はたして、どんなことがおこりますやら…。

「ここが、女珀館か…」。

男性は、看板を見上げてつぶやいた。

男性「こんにちはぁ」
玄関から帳場に響く声。
わたし「はい、お待たせいたしました」
奥から現れた若女将のこうけいが宿帳を差し出すと、男性は「ＫＥＢＯ」と名前を書き込んだ。
わたし「あっ、ＫＥＢＯ様でございますわね。このたびは、１００００ＨＩＴのニアピン賞、おめでとうございます」
ＫＥＢＯ「いえいえ若女将、こちらこそ招待ありがとう」
わたし「お部屋までご案内いたしますわね」
こうけい、深々とお辞儀をしてＫＥＢＯの荷物を受け取る。

わたし「ＫＥＢＯ様もご存知のとおり、当女珀館は格式高い観光旅館でございます。
わたしども従業員からもお客様になにかとご注文することがございますが、
どうかその点ご了承くださいませ」
ＫＥＢＯ「わかってるよ。ここは女珀館なんだから」

こうけいが立ち止まったのは、大浴場の前。
ＫＥＢＯ「あれ？部屋じゃないの？」
わたし「当旅館に宿泊されるお客様は、お部屋に入られる前にまず浴場で体を清めていただきます」
ＫＥＢＯ「へええ、おもしろい宿だなあ。じゃあ、入浴させてもらおう」

浴場の脱衣場まで、こうけいがついてくる。
ＫＥＢＯ「ちょ、ちょっと。これから脱ぐんだけど」
わたし「せっかくのご招待ですから、わたしがＫＥＢＯ様のお体を洗ってさしあげますわ。よろしいでしょうか」
ＫＥＢＯ「わああ…、そりゃいいや、お願いするよ」
ＫＥＢＯの顔はすっかり緩んでいた。
ＫＥＢＯ「妻よ…すまない」

わたし「お肌がすべすべになるまで洗いましょうね」
ＫＥＢＯ「ほわ、わはあ、いいよぉ、若女将ぃ〜」
ほかにはだれひとりいない大浴場に、ふたりの声が響く。
わたし「髪も念入りにお洗いしますわ。育毛剤入りシャンプーでございます」
ＫＥＢＯ「おっ、気が利いてるなあ」
わたし「せっかくですから、むだ毛もお剃りいたしますわ」
ＫＥＢＯ「わあ、そこまではいいよ」
わたし「わたしからのご注文でございます。ぜひ剃らせていただきたく存じます」
ＫＥＢＯ「ありがとう〜。若女将の手つき、慣れてるな」
こうけいがＫＥＢＯの脚や腕の毛にかみそりを当てると、毛ははらりと抜けるように取れていった。

ＫＥＢＯ「ああ、さっぱりした。若女将、ありがとう」
脱衣場に戻ったＫＥＢＯの全身は、さっきとは見違えるほどに白くつややかに見えた。
わたし「お湯からお上がりになりましたら、こちらをお召しくださいませ」
こうけいの手には旅館の浴衣が一枚。
ＫＥＢＯ「まだ下着つけてないんだけど」
わたし「当旅館では下着をつけずに浴衣をお召しいただいております。ご注文ですわ」
ＫＥＢＯ「…それに、その浴衣…ちょっと小さくない？」
わたし「いいえ、ぴったりなはずですわ」
怪訝に思いながらも浴衣に袖を通すＫＥＢＯ。
ＫＥＢＯ「！？」
不意に、全身が何かに圧縮されたような感覚が走ったのだ。
わたし「ほら、ＫＥＢＯ様のためにあつらえたようですわ」
ＫＥＢＯ「体が浴衣に合わさった…まさか？」

ＫＥＢＯはようやく客室に案内された。
お膳に食事も用意されている。
わたし「さあさあ、ごゆっくりお食事くださいませ」
ＫＥＢＯ「ああ腹減った。いただきまーす」
わたし「まずは、わたしがＫＥＢＯ様のお口にお運びしますわ」
ＫＥＢＯ「さすがに結構だよお」
わたし「これも、ご注文ですわ。さあ、あーん」
ＫＥＢＯ「……あーん」
わたし「ほうら、おいしいですか？」
ＫＥＢＯ「おいしいけど…なんだか体が…胸騒ぎが……」
わたし「強力女性ホルモンをお盛りしましたわ」
ＫＥＢＯ「なんだってえ〜！？」

あわてて浴衣を脱ぐＫＥＢＯ。はだけた胸には女性の乳房がぶらさがっていた。
ＫＥＢＯ「む、胸がふくらんでる〜！けぼぉ〜っ！」
わたし「さっきのシャンプーも効きはじめるころですわね」
ＫＥＢＯ「わわっ！急に頭が重く！」
バサッと音をたてて、ＫＥＢＯの頭髪が急激に伸びた。まるで女性のように。
わたし「ほんと、きれいな髪ですこと」
ＫＥＢＯ「けぼぼ〜！恥ずかしいよぉ〜！」
わたし「わたしが、整えてさしあげますわ」
こうけいは冷静に髪を丸髷に結っていく。
ＫＥＢＯ「この髪じゃ、まるで若女将だよぉっ！」
わたし「左様でございますわ。ＫＥＢＯ様には、新しい若女将になっていただきたく存じます」
ＫＥＢＯ「なぁんだってぇ〜〜っ！？！？」
素っ頓狂にあげた悲鳴も、ソプラノボイスになっていた。

わたし「当女珀館は、ＫＥＢＯ様を若女将としてご招待したのですわ」
ＫＥＢＯ「そんな、聞いてないよぉ〜！」
わたし「ほら、宿帳をごらんくださいませ」
こうけいが宿帳を開くと、さっき記入した「ＫＥＢＯ」のサインの上に、「私は当旅館で若女将としての業務に従事いたします」の文字が。
ＫＥＢＯ「こんな文章、見たことないよ〜！けぼ〜っ！」
わたし「契約書を見落としてはいけませんわね」

わたし「さあ、わたしからの最後のご注文ですわ。
当旅館の若女将の証、この着物をＫＥＢＯ様にお召しいただきます」
こうけい、するりと帯を解き、桜色の着物とその下の襦袢を脱ぐ。
正式な本来の和装通り、一糸纏わぬ女の裸体。
ＫＥＢＯ「け、けぼぼ〜っ！助けてくれ〜！」
わたし「ＫＥＢＯ様。お体もお心も、すっかり女性にお近づきになりましたわね」
ＫＥＢＯ「か、体だけだよ〜！」
わたし「嘘ですわ。わたしの裸体を見ても、興奮してらっしゃらないではありませんか」
ＫＥＢＯ「こんな状況で興奮できるかよ！けぼぉ〜〜！」
わたし「役に立たないモノなんていりませんわよね」
こうけいがＫＥＢＯの股間に手を当てると、そこにあった膨らみがすうっと引っ込んでいった。
ＫＥＢＯ「私の男性が…。妻よ、娘よ……」
わたし「さあ、若女将。あなたはここで、いつまでもただ働きですわ」
ＫＥＢＯ「いつまでも！？ただ！？」
わたし「ええ。わたしはもう、５００年以上も若女将をやっておりました。
ＫＥＢＯ様のおかげで、ようやくもとの男に戻れます。ありがとうございますわ」
ＫＥＢＯ「５００年だって！？」
わたし「当旅館の若女将はいつまでもこの姿、不老不死でございます。しかし、給料も休暇もございません」
ＫＥＢＯ「けぼ〜っ！そんなのいやだよ〜！」
わたし「久しぶりの新しい若女将の誕生の瞬間を、全館あげて期待しておりますわ」
ガサガサ…ゴソゴソ…。
そういえば、客室のふすまの向こうから、聞き耳を立てるような物音がする。
ＫＥＢＯ「う、うわああ、怖いよ〜！」
いくら泣き喚いても、ＫＥＢＯの体は動かない。

こうけいが自分の着ていた襦袢と着物を、新しい若女将の麗しき裸体に被せていく。
わたし「ほうら、お似合いですわよ、若女将」
ＫＥＢＯ「いやっ、いやですわ〜！助けてくださいませ！」
わたし「言葉遣いも若女将らしくなってきましたわねぇ」
ＫＥＢＯ「く、口が勝手に女将言葉を話しますのよ、よぉ！？」
わたし「さあ、あとは、帯をむ・す・ぶ・だ・け」
こうけいの手が、ＫＥＢＯの背後にまわっていった。

「そこまでですわよ！わたしの偽者さん！！」
声とともにふすまが開いた。
ＫＥＢＯ「ああ！？若女将がもうひとり！？」
ふすまの向こうにいたのが、本物のこうけいだった。
偽者のわたし「ば、ばれたか！退散！にゃああ〜っ！」
とたんに旅館全体が跡形なく消え去り、ＫＥＢＯは草原に残された。

ＫＥＢＯ「ふう…助かった。ありがとう若女将。体も元に戻ったし」
わたし「ＫＥＢＯ様の到着が遅いようですので、捜しましたわよ。危なかったですわね」
ＫＥＢＯ「あの旅館はいったい…？」
わたし「看板がピンク色でしたわよね？当旅館の看板は白がトレードマークですわ。
ピンク色の看板は、山猫がやっている偽者。お気をつけくださいね。
それに、宿帳にも」
ＫＥＢＯ「体も、本物の若女将とは違って…」
わたし「それは言わない約束ですのよ。おほほほほほ…」
本物の女珀館の看板が、歩くふたりの前に見えてきた。

本物の女珀館の帳場。
こうけい自ら、宿帳をＫＥＢＯに差し出す。
ＫＥＢＯ「変な契約事項はないだろうな…。若女将として招待とか…」
わたし「ご安心くださいませ。ＫＥＢＯ様は宿泊のお客様としてご招待しておりますわよ」
ＫＥＢＯ「そうか、よかった」
「ＫＥＢＯ」と名前を書き込み、その下の性別欄の「男」に○をつける。
わたし「あの、ＫＥＢＯ様。宿帳にお気をつけくださいと、さっき申し上げましたばかりですが」
ＫＥＢＯ「えっ？……け、けぼっ！！」
自分の全身を見回しながら、ＫＥＢＯはソプラノボイスで驚愕した。
いつの間にか、自分が振袖姿の若い女性になっていたからだ。
わたし「性別欄の記入が、間違っておりますわよ」
ＫＥＢＯ「あっ…ごめん。これでいいよね」
「男」につけた○を二重線で消して、隣の「女」に○をつけるＫＥＢＯ。

帳場の奥から、純白の着物を纏った大女将が現れる。
大女将「ＫＥＢＯ様、いらっしゃいませ。１００００ＨＩＴおめでとうございます。
いかがでございましたか？本物の若女将のＴＳは？」
ＫＥＢＯ「あまりのすばやさに、びっくりしました」
わたし「ＫＥＢＯ様には和服がよくお似合いですわよ」
大女将「わたくしもそう思いますわ。こうけいさん、ＫＥＢＯ様に館内をご案内してちょうだい」
わたし「はい。まいりましょう、ＫＥＢＯ様。
わたしども従業員からのご注文はおひとつだけですわ。ＴＳなさったお体で、ごゆっくり女珀館をご満喫くださいな」

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