女珀館の若女将シリーズ
「不審者？の巻」
作：こうけい
（20020516発表）

先日ございました、びっくりする事件のお話です。

「泊まらせてー！」「助けてっ！！」
「退去せよ！」
女珀館の門から、不穏な争い声が聞こえてくる。
玄関からこうけいが駆け出てきた。

わたし「なんですか、いったい！そうぞうしい」
こうけいが見ると、泣き叫ぶ３人の女を３人の警官が必死で取り押さえている。
警官Ａ「不審者がおたくの旅館に侵入したのです」
女Ａ「女将さん、泊まらせてっ！」
女Ｂ「わたしたち、大学の運動部の学生なんですけど」
女Ｃ「合宿所で断食させられて、死にそうなんです！」
こうけいは、女たちの目と、そろいのジャージを見て状況を理解した。
わたし「門をくぐった以上うちのお客様です。お通しなさい！」
警官Ｂ「女将さん、ご存知ですか？最近、こちらの合宿所から旅館に逃げ込む女子学生が増えていることを」
わたし「非人道的な合宿からは、逃げ出しても当然です」
警官Ｃ「いいえ、侵入者が旅館に危害を加えるかもしれません」
わたし「道義的には救ってあげなくてはいけませんわ」
警官Ａ「しかし、被害は未然に防がなくては」
わたし「当旅館の主権侵害、いえ営業妨害ですわよ」
警官Ｂ「あの大学とわが警察との友好関係を損ねるわけにはまいりません」

騒ぎを聞きつけて、大女将もやってくる。
大女将「こうけいさん。彼女たちに、こちらを食べさせてさしあげなさい」
大女将、山菜の煮付けを盛った皿をこうけいに手渡す。
こうけい「お客様。とにかく、これをお食べくださいな。
差し入れだけなら問題ないですわよね、おまわりさん」
こうけい、煮付けを箸でつまんで女たちの口へと運ぶ。

喜びながら煮付けを食べた３人の女たちに、異変が起こった。
女Ａ「か、体じゅうがむずむずする…」
次の瞬間、警官たちは前につんのめった。
取り押さえていた女性たちの胴体が、ずるりとすり抜けてしまったからだ。
女Ｂ「あれれ？いったい…この体は！？」
さっきとはうって変わって低くなった声。彼女たちは、スーツ姿の男性になってしまったのだ。
警官Ａ「これは……皮！？」
警官たちの腕の中には、女たちの皮が、着ていたジャージごと残されていた。
大女将「この山菜、昆虫の脱皮を促進させる成分が含まれているらしいですわよ」

わたし「さあ、不審者はいなくなりましたわね」
警官Ｂ「そんなバカな…」
元・女Ｃ「わたしたち…男に…」
わたし「これでもう、あの合宿所に戻らなくていいのですわよ。
殿方、いらっしゃいませ。女珀館へようこそおいでくださいました」
大女将「自慢の大浴場もございますわよ。男の体の楽しみ、存分に味わってくださいませ」
元・女Ａ「あ…ありがとうございます」
大女将、男になった元女たちを玄関に案内する。

そのとき、門に数人の女が駆け込んできた。体育会だろうか、みな体格がいい。
女Ｄ「すみません、大学の運動部のものです。うちの部員がこちらに逃げ込まなかったでしょうか」
わたし「連れ戻しに来たのですわね。……こちらにおりますわよ。少々お待ちくださいな」
こうけい、３枚の皮を取り上げると、警官たちに投げつけた。
皮が警官たちの体を覆う。
警官たち「わ、わわっ、声が〜っ！」
皮と体が一体化すると、３人の警官は、ジャージを着た女になっていた。顔も体格も、さっきの女たちそのままだ。
女Ｅ「さあおまえら、とっとと来い！脱走の罪は重いぞ！」
女Ｄ「びしびし鍛えてやるからな！」
女になった警官たちは、先輩部員の女たちに連行されていった。
警官たち「助けてーっ！なんで私たちが！？」

※この作品はフィクションですわ。
特定の人物、団体、国家などとは一切関係ございません。そのへん、よろしくてよ。

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