女珀館の若女将シリーズ
「階段の巻」
作：こうけい
（20020503発表、20020511再録）

役人Ａ「運輸…国土交通省からまいりました役人Ａです。
おたくの旅館、駐車場から出る通路の階段の勾配が急なのでは？安全性に問題がありますね」
わたし「はあ、そうですか？確かめにまいりましょう」
役人Ａとこうけいは、折れ曲がった階段を上がって駐車場へ向かう。
従業員「若女将、玄関に役人が来ていますが」
わたし「しょうがないわね…今行きます。役人Ａさん、すみませんがここでお待ちくださいね」
役人Ａを駐車場に残し、こうけいは玄関に戻る。
役人Ｂ「建設…国土交通省からまいりました役人Ｂです。
おたくの旅館、駐車場に入る通路の階段の見通しが悪いのでは？安全性に問題がありますね」
わたし「はあ、女性のお役人さんですか。それに、さっきも同じ役所から似たこと言われましたわよ」
役人Ｂ「駐車場へ入るところは旧建設、出るところは旧運輸の担当なんです」
わたし「せっかくひとつになったのに、効率悪いわね」
役人Ｂ「そこはいろいろありまして、旧建設と旧運輸は仲がちょっと…」
役人Ｂとこうけい、駐車場への階段のすぐ下で立ち止まる。
そのとき、階段の中ほどから爆発音が聞こえた。
役人Ｂ「大変です！行ってみましょう」
役人Ｂが階段を上がっていくと、同じように爆発音に驚いて階段を下りてきた役人Ａといっしょに転げ落ちる！
わたし「あーあ、やっぱり安全性が悪かったかしら？」
こうけいの手には、爆発音発生装置のスイッチが握られていた。
“役人Ｂ”「ああっ！？あたしがいる！」
“役人Ａ”「えっ、私の声？？？」
“役人Ｂ”「…これ男…役人Ａさんの体！？」
“役人Ａ”「……痛っ、胸がある！…こ、こっちはないっ！！」
わたし「肉体交換、おめでとうございます。これをきっかけに仲良くしましょうよ。ひとつの省になったんだからなおさら」
大女将「こうけいさん、また一歩、サービスの精神を身につけられましたわね」

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