その後
作：牡蠣 倶毛子
人は本当に欲しいと思ったものが手に入らないとき、他のもので埋め合わせをしようとするの。・・でも埋められないのよ。本当に欲しいものじゃないから・・』
エレンは、そんな事を言っていた。
1
こんな姿になってローガン達とどう対応したら良いんだろう？
という考えよりも切羽詰った状況というのが先に出て気がついたら
受け付けのロビーでローガン達を呼び出していた。
ローガンはＭＩＴ(マサチュセッツ工科大学)を卒業した後、ロサンゼルスの大学病院で研究医をしている。深夜なので客はもう誰もいない
そんな時、「はるかなの？」と後から声をかけられる。
たしか、セアラだ。セアラ・クローズ。同じくＭＩＴの同期だ
ボクは、首を振って否定する。
ボクがアキラだとはいえなかった。
そういえば、あの時エレンが僕に間違えて言ったのも はるか だ。
「ごめんなさい。よく似てたものだからローガン？ちょっとまってね。呼んでくるわ」
2
「ローガン、ちょっと、ローガン聞いてるの？ ローガン・ブルーム！！」
セアラは口うるさく言う
「・・なんだよ。聞こえてるよ」
俺（ローガン）は面倒臭そうに答える。いつものことだが研究中はもっと静かにして欲しいものだ。
シャーレの中の細胞を顕微鏡で覗く。
いつもと同じ作業。しかし、いつもと何処か違うところは無いかと新しい発見を求めている。手首が麻痺しているかのように動かないときもあるがそんなのはたいして気にならない。たぶん疲れてるのだろう。・・・この頃。徹夜だったからな
「貴方に訪問者よ。女の子。結構かわいい娘だったわ」
セアラは図書室から持ってきた必要な資料を机に置く
「なに？ 女？」
若い女に弱いのは俺の性だ。
「でも、こぶ付き。あれだけお腹が大きいんだもの。て・・いうかローガンあなた何かやったんじゃないの？」
セアラは、怪しむように睨み付ける。ああ、だまってりゃこいつもかわいいのに・・
「いや、そんなわけはないんだけどなぁ」
しかし、自信はない。頭を掻きながらエレベータまで移動。
一階に着きロビーを見渡すと彼女はいた
・ ・・確かに可愛い。しかし、見覚えがないぞ！
あれだけのレベルなら大概覚えているはずなんだけどな
「えっと・・」
どうしようか、確かに数えきらないほど女と付き合ってきた俺だが・・
「ボクだよ。・・アキラ」
ショートカットな髪型。胸はそこそこありそうだし・・
しかし、気になるのはその腹・・
知らぬ間にヤッちまったか？
アキラ・・アキラ？・・・そんな名前の女いたっけな・・
「相変わらず、女を泣かせているのか？・・まったく」
こいつは、俺を知ってる？ う〜ん。心当たりがあるようなないような・・
「ＭＩＴで同期だったアキラだよ。」
ローガンは、・・じーとアキラの顔を見る
「そうだ。お前に女顔ってひやかされつづけたアキラだよ」
「・・・あいつは男だぞ」
ローガンはまだ疑っているようだ
「ボクは男だ」
「・・・・」
「・・・・」
「・・ケイトとは上手くいっているのか？ ＭＩＴの時付き合っていた彼女だよ」
「・・・お前、そんな趣味があったのか？・・・確かに女みたいだとは思ってはいたが・・」
「五月蝿い」
「それに、その腹どうしたんだ？」
「・・そのことで相談しに来たんだ」
3
「まず女性化の原因だが種と共生している細菌の老廃物が原因で起こる誤動作だな
仕組みは環境ホルモンと同じだよ」
********************設定説明
前回かいたバイオハザード物（←こうけい注。『西暦2020年9月』のことです）は人間の女性ホルモンとまったく同じ物を他の植物に作らせそれを食すことによって起こることであった。
つまり。厳密には環境ホルモンとは違う。
しかし今回の神酒は細菌の老廃物（神酒）が女性ホルモンと同じ働きをすることにより起こる、いわば誤動作でこれは世の中の環境ホルモンと同じ働きをする。
それを人工的起こすものが女性ホルモン様とか呼ばれて売出されているはず
科学作用が似ているから起こるものという理屈
「それより面白いデータが取れた・・ＣＴスキャンによる映像だ」
硬いベットに横になり身体の内部を精密に映し出す映像はとても鮮明だ
この大きくなったお腹を映し出している
「この所々にある黒い影は何だ？」
単に液体（神酒）が詰まっているだけではなく何かが映っている。
「聞いて驚くな。一つは眼球だ。・・こっちのは肝臓。・・ここに隠れてるのは肺のなりかけかな。・・子宮や卵巣まであるぞ」
（ブラックジャックのピノコの生まれた時を参照。
もしくはリバイヤサン。あれを生じさせるのがＥＣ細胞のはず）
「誤動作が細胞にまで影響しているということだ」
4
腸内を何度も洗浄する。種を取るためだ。
（細菌のほうは種が無ければ他の細菌よりも弱い存在なので心配は無い）
それがとてつもなくつらい。
女性ホルモン（擬似）の影響で精巣が完全に破壊されている状態だから
女性化の方も直らないようで代わりにお腹の中で作られていた子宮と卵巣の移植を
薦められた。
男に戻るのは諦めるしかなく、移植を受け入れた。
5
「もう、こんなに可愛くなっちゃってまさかアキラとはおもわなかったわ
・・こら、暴れないの」
セアラは化粧の仕方が下手だといって無理やり化粧室につれてきた。
「いいよ。そんなに上手くなくたって」
「何言ってるのよ。化粧は大事よ。それに元がこんなに良いんだから、相当な美人になるわ」
セアラはそんな事を言いながらも僕を着せ替え人形のオモチャにして遊んでる。
「あっ、そういえばボクを はるか という人と間違えたみたいだけど
そんなに似てるの？」
「似てるも何もそっくりよ。双子かと思うくらい」
「ふ〜ん。どんな人？」
「エレンの彼女よ。彼女相当なレズだったみたいね
幼い頃からいつも一緒だっていっていたわ
アキラがＭＩＴに来る前まで付き合っていたのよ。」
「その人は？」
「・・亡くなったわ。事故でね。３ヶ月くらいエレン何も言えなくなるくらい落ち込んでた。そういえば・・アキラが来てから元気になったわね
・・今思えば、アキラにはるかを重ねてみていたのね」
6
バングラデッシュにいるうちにアメリカ人30代女性虐殺されるという話を聞いた。
エレンの事だ。彼女は僕を逃がした後どうしたのかわからない。
しかし、あまり良い想像はできなかった。
エレンは離婚していた。夫婦生活が上手くいかなかったらしい
7
ローガンからよくデートに誘われるようになった。
僕を女性としてみているのだ。
断り続けているのだが、あんまりにもしつこいので一度だけ付き合ってみる事にした
映画みて食事をしてホテルは断るというデートコース。
しかし、そんなはずだったのがカクテルに酔ったせいか迂闊にもロマンチックになっていたせいか気がついたらホテルの一室に連れ込まれていた。
「いい加減。認めなって君は美人だ」
「君はもう生物学的にも女性だよ。俺が保証する」
そんなくどき文句に負けてまさかローガンと寝る事になるとは・・
しかし、ローガンはそんな時でも自分の手首をしきりに気にしていた。
麻痺が広がっていて思い通りにいかないらしい
8
大学病院にもどって検査をする。
精密検査の結果が出た。
「筋萎縮性症候群・・らしい」
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