クローン
作：牡蠣 倶毛子
突然ですが、ナレーターの牡蠣倶毛子ですぅ
例えばあなたはこんな事おもったことないですか？
自分の女性型クローンを作って自分の脳を移植してみたいって
そう、たとえ相手の人格を犠牲にしてでもね
（私、ほんとはこんな危ない人なんですぅキャハハ☆）
そんな私が書いたこんな話はいかがですか？・・そうこんな話。
1
「きゃあ」
ローガンの車椅子を後から押していると見舞いに来ていた子供の一人がお尻にタッチする。
「アキラのおばちゃん、さようならー」
「こら、待ちなさい。そんないたずらばっかりして・・それに、せめておね−さんと呼びなさい！私まだ29なのよ」
ローガンが笑っている。
「なによ、あなたまで・・」
「いや、ＭＩＴ時代にはとても考えられなかった言葉だなと」
「それは言わない約束でしょ」
私はこれでも元は男だ。ある植物の種と細菌の影響でこんな姿になってしまった。
しかし、子宮もあるし卵巣もある生物学的にも女性である。
ローガンの筋萎縮性症候群は日に日に酷くなり今ではまともに歩けない。
身体て動かせるのは指先の一部と首筋くらいしかない。
呼吸器系にまで影響が出ればもうこうして話をする事もできなくなるだろう
「・・アキラ、お前に頼みがあるんだ・・
技術的にもお前にしか頼めない・・」
「なに？」
「まず地下2Ｆまでいくぞ」
（地下２Ｆは、今ではだれも使っていないはずのフロアよね）
「わかったわ。」
エレベーターに乗って地下２階まで行く。
やはり、通路はホコリだらけで、しかし、昔の研究室であった部屋には明かりがつき
中はとても綺麗にしてある
少女が一人いた。何故こんなところに
「ちょっとロバートこれはどう言う事？この子は何？」
「こいつは俺のクローンだ」
「現代ではこの筋萎縮性症候群を治す方法はまだ確立されてない
しかし、それでもクローンへの脳移植という方法を使えば元の健康な身体に戻る事はできる」
少女は、クローンという言葉にピクリと反応をする
「・・・ねえ、こんなのは知ってる？
人間の身体は何年かたてばすべて新品の細胞と入れ替わるの
でも、入れ替わったとしてもその人が別人になるわけでもない
私の場合は、たまたま本人の身体以外の場所で細胞が増えただけの話
つまり、私は過去の貴方から枝分かれしたもう一人の貴方なのよ
古い細胞のあなたがこのまま死んで私が貴方の代わりに生きていくのが一番利にかなっていると思わない？」
少女は、走ってこの部屋から出て行く。
「大丈夫だ俺の持っている鍵が無ければエレベーターは動かない」
「・・・ロバート。本気で脳移植を考えているの？
あの子、まだ10歳位じゃないの？」
「・・・そうでなければ、この先生きていく事はできない
身体をまったく動かす事もできないただ生きるだけの存在では意味がないんだ
・ ・・俺にはもうこの方法しか残されてはいない」
生活感あふれるさっきの部屋とは違いこの部屋は元の研究室だった面影を色濃く残していた。巨大な試験管の中に入った不完全なクローン達。
髪が異様に伸びていてわかり難いが目が４つある短い手首の少女。
内臓だけの者。小さな試験管には個別に臓器だけを移してあるものもあった。
受精卵の状態に近いＥＳ細胞が大人になったロバートの中に存在するわけが無い
これらも無理やり未分化させたＥＣ細胞の状態から作られているのだろう
ロバートはこの場所で秘密裏に研究を続け、あの子はここで生まれたのだ。
「お前は失敗作だ」
「・・・それは、誰にとっての失敗作なの？
貴方は思いのままにモノを作る。それらの中から上の世界の基準で良しとされたもの
が『成功』といわれている。
・・・だけど、『失敗』とされたものこそが心の底で本当に作りたかったものではないの？」
「・・違う。確かにお前は女性体としてみればこれ以上無いほど完璧だ
しかし、それはＹ生殖体の遺伝子を発現させようとすると上手く構成できないからだ
俺には時間が無い。だから、作りやすい女性型を選んだんだ」
「・・うそよ。貴方は本当はアキラが羨ましかったんじゃないの？」
「違う！・・・はぁはぁはぁ」
（この子、本当は自分の存在を認めて欲しいのね）
「・・ねえ、ちょっと待って。何故あなた私の存在を知っているの？」
「やっぱり、あなたがアキラなのね。ロバートが話すことといえばあなたの事くらい
だもの。知っているわ」
「へえ、一応のコミニケーションはしていたのね
ロバート。ごめんなさい。手術は拒否するわ
このまま父と子の関係でいくのが一番無難に思えるの」
2
「こんばんは、ルシア」
元もとのナンバーで呼ばれていた名前をすて私が勝手にルシアとつけて呼んでいる
まだ戸籍はないもののそのうち登録できるだろう。
「あら、アキラさん。いらっしゃい」
少女とは思えない大人びた言動はいかにもルシアらしい
「ロバート調子はどう？」
ロバートはいつも無言だ。
口を動かせないため喋れない事もあるが唯一動かせる指先を使ったキーボードでの
コミニケーションもしない。
しかし、ロバートの身体がいつも綺麗に洗ってある事を考えるとルシアがきちんと
世話しているのだろう。
関係がどうあれルシアにとってはたった一人の肉親なのだ。
珍しくロバートがキーボードに触っている
ディスプレイを見ると一言「殺してくれ」と書かれてあった
昔なら尊厳死として認めたかもしれない
しかし、今は「ルシアの為に生きなさい」と言ってやった
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